私も少年野球に関わって、
１０年以上になるが、

これほどまでの
「小学生アンダースローピッチャー」
にはお目にかかったことがない。

それはまさに、
千葉ロッテの渡辺俊介投手を、
髣髴させるようなフォームであった。

我々世代が、
エースピッチャーを思い浮かべると、

どうしても「右の本格派」であり、
その右腕から繰り出す「豪速球」が、

いかに速くて重い球質かが、
話題になったものだ。

昭和４０年後半から、
５０年以降にかけて、

サイドスローやアンダースローの
軟投派ピッチャーが台頭し全盛を極めた

深く折り曲げた上体から、
スクラッチされた投球腕が、

地面スレスレに、
しなりながらリリースされ、

そしてホップするかごときの球が
打者の胸元に食い込む様は、
圧巻でもある

その強靭な肉体は、
特にアンダースローには、

負担が多いと言われる
足腰の筋力と、

鞭のようなしなやかな筋肉は、
並の投手では、

決してマネの出来ない、
投法かと思われる

この投法は、
スピードボールを放るには、
不向きと言われるが、

阪急ブレーブス時代の、
山田投手は、

全盛期には１４７ｋｍ／ｈの、
球速を誇ったと言う

話は脱線するが、
かの野村克也元楽天イーグルス監督が、

ＧＭ兼監督だった頃の、
実業団チームの強豪シダックスが、

これまたアマチュア野球の
最強豪チームキューバと
対戦した時のことである

シダックスのピッチャー杉本投手は、
右のアンダースロー投手で、

キューバチームの強打者たちを
見事ねじ伏せ勝利に導いたが、

のちにキューバのべレス監督は
こう語っている。

「あんな変則ピッチャーは、
キューバ中探しても存在しない。
だから（杉本投手を）打てるはずがない」
と。

その言葉に呼応するかのように、
野村監督も次のように語られている。

「キューバには１５０ｋｍ／ｈを
超えるピッチャーはいくらでもいるが、

アンダースローピッチャーはいやしない。
（全日本も）オリンピックや国際試合には、
アンダースロ―ピッチャーを用意した方がいい」

話を戻したい

私自身、
アンダースロー投手は好きなのだが・・・

小さな巨人里中クンや、
水原勇気ちゃんは特に好きです（笑）

しかし対象が小学生ピッチャーの場合、
どうしてもその投法に疑問が浮かぶ

その理由として、
まず小学生の場合、

野球技術の基本を、
しっかり身につけるという、

当たり前の観点に立った場合、

スローイングの基本は
オーバースローに尽きる、
という考え方に依るものだ

ひとつには障害を生みにくい、
正しい投法をマスターするため

もちろんアンダースローで
正しい投げ方が学べない訳ではないが、

次の理由によって、
勧めることが出来ない

小学生の場合、
あるいはそれが中学生あたりであっても、

ポジションは決してピッチャーに
限定されることはないはず、

ということだ。

外野手には外野手の投げ方、
要は遠投力が必要とされる
オーバースローが大原則であり、

また内野手は、
すばやい投げ方が求められるので、

オーバースローから、
ややサイド気味のスローイングが、
基本になってくる

となれば必然的に、
投球の原点は、

オーバースローになることは、
理の当然であって、

アンダースローの必要性は
どこにもないのではないか

私見ですが、
小学生ピッチャーの理想はまず、

右でも左でも、
原則、大きなモーションから、

必要以上に重心を下げる、
低重心投法は避けて、

オーバースローか、
スリークォーターによる、
ピッチング術を指導したい

ゆるやかに、
スクラッチモーションを作り、

グラブを引き込み、

そしてナチュラルに、
肘中頭部をキャッチャーに向いた、

コッキング期から、
リリースを迎えるモーションを、
作らせたい

松坂投手のように、
投球腕が体に巻きつくような
腕の振りの重要性を教え、

上原投手のように、
フィニッシュは軸足にしっかり乗った、
大きなフォームがまずは、

小学生ピッチャーの理想かと思う

確かに運動能力の高い子供は、
見よう見真似で、

アンダースローで、
それなりにいいボールを投げることも、
知ってはいるが、

腹筋・背筋、そして足腰の筋力が
未発達な子供を、

アンダースローピッチャーに育てることは、
少なくても私は賛成しかねる

アンダースロー派の生命線は、
球速が上げられない分、

変化球に頼らざるを得ないのは、
周知の事実だ

まして軟式の小学生野球の場合、
変化球は禁止されているのだから、

バッターから見た、

「浮き上がるような
（実際にはホップなどしていないが）

球筋による、
目先だけの打ちにくさ」

のみで、
その投法を指導されるのであれば、
ますます賛同出来かねない

運動神経良く、
器用な子供であるなら、

その両方を指導することは、
可能ではあるが、

さらに重要なことは
「リトルリーガーエルボー（野球肘）」
の発症の確率が高まる点にある

ご存知の通りその主たる因は、
小学生たちの未だ軟らかな肘骨が、

投球の都度こすれあって、
特に内側部分に、
ダメージを与えることによるものだ

オーバーユースはともかく、
正しい投球、
正しい肘の使い方が為されない場合、

「リトルリーガーエルボー」

による障害は、
かなりの確率で、
子供たちの投球肘を襲うはずだ

正しい肘の使い方の中で、
投球時におけるその肘の高さが、

肩ラインから決して落ちない所に、
コッキング期を向かえねばならないとある

これはオーバースローでも、
サイドスローでも同じ理屈であるが、

変則投法であるアンダースローは、
肘が肩ラインより下がりやすく、

足腰の筋力もさることながら、
投球腕の使い方が、

オーバースローと比較した場合、
かなりの負担がかかるものと考えられる

そうこう考え併せれば、
難癖話で恐縮ですが、

小学生のアンダースローピッチャーに、
良いことは何もない気がするのですが・・・

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